Wandering in my lifeのレビュー

雨の憂鬱を再現させるピアノ曲集

"Wasndering in my Life" タイトルの晴れやかさに似つかわしくないアンニュイなピアノ曲集。ナイーブで繊細な曲とジャケットは、曇り空から間断なく降り注ぐ雨と、それを見上げる人の心象を表して申し分ない。好き嫌いは分かれる部分もあるが、優れたコンセプトアルバムに仕上がっている。

すべてインストルメンタルではあるが、いまにも誰かの澄んだ歌声が聞こえてきそうなメロディアスで没入感のあるサウンドだ。

 その一方で、ピアノ中心のアルバムとしてはバリエーションにやや乏しい印象も受け、10曲を聴き通すうちにヘッドホンの中からも雨がしたたり落ちてくるような錯覚にとらわれそうな気持ちになった。雨といってもいろいろな雨があり、晴れ間を誘う雨もあり、あるいは快晴に雨天を幻想することもあるだろう。音楽を通じて降雨の世界を広げてほしかったところもある。
 少年の小さな旅を想像させる曲名の付け方も面白く、コンセプトの強さに曲が追いつけていない感じもあった。ピアノの音色を美しく響かせミックスも申し分ない。その単調さ塗り替える工夫もサークル主には容易であろう。

個人的には8曲目の「出会いと別れの模型館」がフェイバリット。どこか優しく身が切られるような切なさを感じる。ゼロ年代、僕らが愛したエロゲにはこんな夢がぎっしり詰まっていたことを思い出して涙を拭(ry

コンセプトアルバムが好きな人におすすめ。

物理的なカタチとしては、CD1枚、ジュエルケース、作者コメントつきライナーノーツ。