ボカロEDM6のレビュー

ボーカロイドテクノ\EDMの現在形!

アニクラシーン・ボカロクラブシーン衝撃を発し続けるSPACELECTRO (スペースレクトロ)がプロデュース、メインコンポーザーとなって作り上げているボカロEDMシリーズの6作目。

東方インストEDMシリーズと並び、現在のクラブシーンになくてはならないシリーズだ。強いドロップで押し込まない、ボーカロイド(とくに初音ミクが多い)の特性と文脈を生かしたボーカル曲が多く収録されており、メロディアスで繊細なパンチラインも多い。

たんなるテンアゲEDMだと思って聞き始めるとあまりのエモさに泣いてしまうこと間違いなしであるい。

Tr.4.Anywhere IN the Worldのような「初音ミクサウンド」らしい明るく希望にあふれたHOUSEテイストの曲もあれば、Tr.3沈のようにダークで複雑な構成と歌詞(あおまふ)をもつ曲もあって、こちらはもう最後までがっつり意味不明な歌詞で苛んでくれてもいいぐらいのサイケ感が漂っている。とはいえ、悲恋や別れの歌が多いのは、どことなくボーカロイドの悲劇性に対する意識が働くからかもしれない。

もちろんEDMとしてもがっつり優秀だ。tr6.beautiful lieのようにAメロが聴き応えのあるブレイクになっていて、優しいミクの歌声からサイケっぽいゴリゴリっとしたシンセがぐっとくるのがいい。

フェイバリットは、Tr8.君を忘れて何処へゆく。
やなかみゆきのエモーショナルなTropical Houseは明るくて切なくて、夕暮れの南国と処理できない恋人とも友人ともつかぬ誰かとの別れの悲しい研究といった趣がある。ミニマムな、印象深いフレーズが繰り返され、寄せては返す波のように、チリチリっと響く4つ打ちのリズムが心地よい。

クラブ・フェスサウンドとして注目されがちなアガる楽曲と、エモーショナルなミクサウンドとを高度に融合させているボカロEDMは、Eサード・サマーオブラブの一翼を確実に担うポテンシャルと音楽性を示している。

ボカロ好きはもちろん、音圧の高いEDMサウンドが苦手な人でも、聞いてほしい一枚に仕上がっている。もちろん大音量でかけて盛り上がるのも最高にいい感じだろう。一方で超盛り上がることを期待してヘッドセットで聞くとクラッシュが弱くてもっとこう、盛り上がるのになーと思うところはある。ただ、これはもうこっちでエフェクト書けて楽しんでしまうのがよい。ちくわさびのミニミク三体と焦り顔ミクのイラストは超可愛いのでこちらも3億点。ジュエルケースCD1枚。歌詞カードはQRコードでPDFをDLする形で付属する。