こすもらじお - いつかだれかがうたったうた -:ライナーノーツ
1曲目「スコシ・フシギ・ラジオ」
ラジオをイメージした宇宙的なテクスチャがほしいといういずみのリクエストにより、FMシンセの音色を使って作ったデモの一つ。のちに音色を切り替えて作り直したが、最終的に修正前のバージョンが使われた。
4曲目「しえすた」
いずみあやから送られてきた歌詞の一部と十数秒ほどの鼻歌ファイルをもとに補作・編曲した。
「げろかふぇ」にて初演(2011年2月。共演者はカヲル、くにい)。
オリジナルの鼻歌フレーズは、リフレイン部分のメロディと、マイナー調のラップ部分の対旋律部分として取り込まれている。鼻歌ファイルのフレーズの一部は、ダブバージョン(シングル「しえすたしんぐる」、同年5月)にて再利用された。
コーラスパートはすべて音声ファイルの形で個別に録音され、ファイルとして送信されたものをミックスした。
リフレインのエレピによるコード進行は、マルコス・ヴァーリ「Garra」へのオマージュ。
ダンスホール・レゲエとMPBのエッセンスを再現してみたかったが、日本の歌謡曲的な要素もどことなくにじみ出てしまったかも。
7曲目「いつかどこかで」
1曲目のテクスチャにTHURA*POP「らのうた」(シングル「りてゅらりずむ」、2008年)を重ねてみたいといういずみあやのアイデアにより制作。
「Cosmoradio is still singing on...」という文章のモールス信号MIDIデータが背景で繰り返されている。モールス信号への変換は、Morse Code Translator (http://www.qbit.it/lab/morse.php)を使用した。
これらの音程はMIDIエフェクトを使い、すこしずつランダム化されてペンタトニックスケール上にばらまかれてゆく。
ベースラインはガムラン的な響きを意識している。
エンディングは映画のエンドロールのようにやや冗長である。一度音が途切れたと思われたあとで、1曲目の別バージョンがやや遅いテンポで現れ、遠くに消え去ってゆき、アルバム全体をらせん状の円環構造でしめくくる。
欠片の名前:水準以上の作品
複数の女性ボーカルとコンポーザーが、統一コンセプトで作った作品である。
1)バック・トラックはオーケストラ的なアコースティック楽器と、アナログシンセ的ベースの、ある意味ありえない組み合わせ。マイナーコード。パーカッションの定位も打ち込みっぽく、ありえないが、そういうものなのだろう。
2)3拍子系。マイナーコード。アコースティック+シンセの組み合わせであるが、こちらはフュージョン的に納得のできる編成である。ボーカルはほとんどリバーブやエコーがなく、ドライな印象。
3)この作曲者は手慣れている。くにいさんの歌も上手い。幻想民族系というにはかなり曲調がポップ。基本メジャーコードでもある。
4)NHKドキュメンタリーや「ラストエンペラー」のサントラを思い出させるようなオーケストラ曲。二胡的なフレーズが後半で入るところも。転調はするが、基本的にはマイナー。
5)ジャジーで良い感じ。PFMか、シルク・ドゥ・ソレイユの音楽みたいな雰囲気である。
幻想浮遊系ジャンルの常といえばそうなのだが、歌詞はオペラ的というか、どの曲も複雑すぎるような気もする。リーフレット読み必須。しかし歌詞を追い込まなくても曲として十分聴きごたえがある。
迷宮:手堅いが抑制した感じも受ける作品
1)タイトなリズム、マイナーコード、女性ボーカル。
2)やや和風のオケ、マイナーコード、女性ボーカル。
3)3拍子系、ミニマルなフレーズのカラミ。マイナーコード、女性ボーカル。
4〜6は1〜3のインストである。
作曲はきっちり、手堅い感じだが、反面、全体的に抑制した感じも受ける。
二人の歌姫さんの声をもうすこし魅せる形で展開しても良いのではないだろうか。
アレンジ的にもう少しスパイス的なケレン味など、もうちょっと起伏があると印象に残りそうに思った。
luce:安定した女性ボーカル作品
女性ボーカル歌モノ。
#1は6拍子のブリティッシュ・トラッド風。曲が良い。
#2はバラッド風、曲調はロックに近い感じ。メロディがボーカルの声域に比べてやや高めで、ややつらそう。
#3はボカリーズ(スキャット?)のコーラスから始まり、滑らかにコードが展開してゆく。ソフトロック的幕間曲。
#4はややスローテンポ。コーラスに囲まれてメインのボーカルが歌う。メロディは#2よりも低めの音域で、合っている感じ。タイトルからも荘厳なイメージを意図しているが、音像はややこぢんまりしてしまったかも。
アレンジはしっかりしている。ミックスも良い。意外性は無いが、ジャケットイラストのような雰囲気の「同人音楽」を求める向きには外さない作品。
エレフセリア:物語イラスト+音楽CDの作品
フルカラーイラストのリーフレットと音楽CDの組み合わせによる作品。言葉による説明を排して、イラストと音楽だけで一つの物語を演出している。このシカケはおもしろい。
音楽はオーケストラの音色とシンセサイザーをミックスした、映画音楽的なつくりである。オーケストラ的なアレンジも手慣れており、電子音系・アコースティック音色の組み合わせもうまい。技術的に手堅く、安心して聴くことができる。
しかし付帯音楽として作られているせいか、やや全体的な印象は薄いかもしれない。印象に残るテーマ・フレーズを中心に展開する形にすれば良かったかも。同様に、演出されている物語がやや薄味なのも弱点だろう。典型的なラノベ的な設定で定型以上のものがあまり感じられないので、やはり印象が薄い。今後そういうシナリオが絡んだならば、優れた作品がきっと出来上がることだろう。
クライマックスにはいずみあや氏が歌う、アルバム中唯一のボーカル曲があてられている。曲調はやや抑えめ、という感じで、少しもったいないような気もした。